受賞作品
- 作者: 中村文則
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/07/26
- メディア: 単行本
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作者は77年生まれ。お若いです。選評を読みたかったので文芸春秋のほうで読みました。
内容は幼い頃虐待を受けた青年のお話。たしかに重い素材ですが、後味が悪いわけではないです。テンポ感もあるし。ただ、白湯子の描写に安易さがあるなぁ・・と。いつもは直木賞の方を読んでいるので、久々の芥川賞でした。
- 作者: 薬丸岳
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/08/09
- メディア: 単行本
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満場一致、ダントツで乱歩賞を受賞した作品。作者は69年生まれ。内容は犯罪被害者と少年法というとてもデリケートな素材を扱った社会派ミステリー。緻密な構成にグイグイ引きこまれていきました。テンポといい伏線といい(特に後半)は、勢いが増すばかり。場面展開に「あら?」と思うところもあったけど、最終的には読み手を裏切りません。ワタシは始まりをある程度読むと、悪い癖でつい最後の方を読んでしまうわけです。そして答え(犯人とか)知りながら(予測しながら)そこに至るまでの過程を読むのが好きなんですが。これは二重三重の仕掛けがありました。「ドラマ、映画化したら面白そう・・」と勝手に映像化して読んでいました。
虐待や少年法などは、昨今では少しも突飛な素材でもなければ、忌み嫌うものでもなくなりました。現に、今回の芥川賞作品は虐待や暴力を扱ったものが多かったようです。時代を反映してるのでしょうか。
単なる「情報」で素材展開していったのか、「実体験」でそれらを(アディクションやADがほとんどですが)克服した地盤があってのものなのかわからないけど、まだまだこれらを素材にした作品が世に出て行くのではないかと思いました。素材として「旬」なんでしょうね。今までぼやけていたこれらに対しての輪郭が、昨今富にその闇の部分を剥ぎ取り、輪郭を鮮明にする風潮に対して、私は何ともいえない感情を覚えます。